リストランテアキタでは、約1か月半ごとにコース内容を見直し、その季節だからこそ味わえる料理をご提供しています。
料理が変われば、それに寄り添うワインも変わります。
前回同様、ソムリエ・藤本智さんにもご協力いただき、それぞれの料理の魅力をより引き出すペアリングをご用意しました。
一皿ごとの味わいとともに、今回お楽しみいただくワインをご紹介いたします。
Oltretorrente Timorasso Colli Tortonesi 2023
まずは、藤本ソムリエのコメントから。
白・黄色い花の香りに、熱成による厚みと白亜賀ミネラルの効いた格を持つ、ピエモンテの希少品極ティモラッソ。
高い酸が塩分の効いたブロードで凝縮した旨味を受け止め、豚・牛・ウサギ3種をローストして詰めたアニョロッティのコクにも、白ワインながら十分な厚みで応えられる。
優しい香ばしさが鹿節(燻製鹿肉の削り節)の焼香と呼応、ほうれん草・米・パルミジャーノの旨味と喧嘩せず、ワインの質感そのもので静かにつながる。
ティモラッソは長期熱成能力の高い品種で、若いうちから熟成感に似た厚みを持つのが特徴。この厚みが、通常なら赤ワインを合わせたくなるような肉々しい詰め物のパスタに対して、白ワインで対応できる根拠になっている。
イタリアには、土地ごとに数え切れないほどの土着ブドウが存在します。
今回ご紹介する「ティモラッソ」も、そのひとつ。
ピエモンテ州と聞くと、バローロやバルバレスコに代表される赤ワインを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、その南東部、トルトーナの丘陵地帯には、非常に個性的な白ブドウがあります。
それが、
Timorasso(ティモラッソ)。
今回ご紹介するのは、小さな造り手Oltretorrente(オルトレトレンテ)が造る
「Timorasso Colli Tortonesi 2023」

です。
トルトーナの丘で育つ、ティモラッソ

ティモラッソの故郷は、ピエモンテ州南東部のColli Tortonesi(コッリ・トルトネージ)。
この土地では現在、トルトーナの古名である「Derthona(デルトーナ)」の名とともに、ティモラッソというブドウの個性を世界へ発信しています。
ティモラッソの面白さは、一般的な「爽やかなイタリアの白ワイン」とは少し違うところにあります。
しっかりとした酸。
口の中に残る塩味。
そして、芯のあるミネラル感。
若いうちは白い花や柑橘、桃などの香りを持ちながら、熟成すると火打石や炭化水素を思わせるような複雑なニュアンスへと変化していきます。
時間によって表情を変えていく白ワイン。
そこがティモラッソの魅力です。
2010年に始まった、小さなワイナリー

Oltretorrenteは、トルトーナ丘陵のPadernaという小さな村にあります。
ワイン造りを始めたのは2010年。
現在所有する畑は約7ha。
決して大きなワイナリーではありません。
しかし彼らの畑には、15年ほどの若い樹から、中には100年近く生き続けている古いブドウ樹まで残されています。
彼らが目指しているのは、昔の農家から受け継いだものを守りながら、その土地の歴史や土壌、ブドウそのものをワインに残していくこと。
「新しく造る」というより、
「この土地に昔からあるものを、どう残していくか」。
そんな考え方を持った造り手です。
樽ではなく、コンクリート

このワインの造り方にも、Oltretorrenteの考え方が表れています。
収穫されたティモラッソは、房のまま優しく圧搾。
自然発酵を行い、その後は細かな澱とともにコンクリートタンクで約9〜10か月熟成します。
樽は使いません。
樽の香りをワインにつけるのではなく、ティモラッソそのものが持っている酸やミネラル、果実の厚みを表現する。
澱とともに長く過ごすことで、ワインには厚みと複雑さが加わっていきます。
「何かを足す」のではなく、「葡萄が持っているものを引き出す」。
そんな造り方です。
2023年というヴィンテージ
2023年のトルトーナは、秋から冬にかけて非常に乾燥し、春には雨が戻ったものの、夏は非常に暑い年となりました。
この年のOltretorrenteのティモラッソから感じられるのは、白い花や桃、柑橘。
そして時間とともに現れる、火打石を思わせるミネラルのニュアンス。
口に含むと、しっかりとした酸と塩味。
果実の厚みがありながら、最後は長く、引き締まった余韻へと続きます。
決して「軽い白ワイン」ではありません。
むしろ、
赤ワインのように、料理と向き合える白ワイン。
そんな表現が似合う一本だと思います。
白ワインは、若いうちに飲むもの?
ワインの面白さのひとつに、「時間」があります。
ティモラッソは、若いうちの花や果実の香りだけでなく、瓶の中で時間を重ねることで、火打石や蜂蜜、複雑な熟成香へと変化していく可能性を持ったブドウです。
今飲む2023年。
そして、数年後に飲む2023年。
同じワインでも、きっと違う表情を見せてくれるでしょう。
一度は忘れられかけた、ピエモンテの白ブドウ。
ティモラッソ。
その土地と時間が作る味わいを、ぜひ料理とともにお楽しみください。

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